南 中毒

 帰ってきて一週間以上も経つというのに、
 頭の中にまだ軽いしびれのようなものが残っている。
 時折よみがえる鮮明な花の香り、スパイスの香り。
 その時だけ眠りの底から目覚めるような感覚。
 私の頭と体は まだ北を受け入れていないのだ。
 麻酔にかかったようなぼんやりとした意識のまま、
 バリでの 短くも濃密だった時間を考える。
 これはもう、中毒でしょう。
 南の 甘くしめやかな空気は、
 たった6日間で私の隅々まで
 毒のように行き渡ってしまった。
 南中毒。

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